レポート/中国四国地区分会代表 宅見幸一
2005/11/23 馬氏八極拳セミナー IN 広島
先日広島市内で行われた馬氏八極拳セミナーの内容を報告します!
素早く接近して密着したまま打倒できる!?
八極拳の用法を説明する小林正典老師
八極拳の「挨」、「戳」、「擠」、「靠」の戦闘原則で行うことにより、密着した近い距離で相手の動きを封じ打倒できるのだ!
さらに馬家の八極拳は劈掛拳の曲線の動きを取り入れられて独特の実戦技法となっているのが特徴である。
相手と密着した状態からほんのわずかな動きでご覧の通り相手が転がっていくのである!!
人によっては神秘的に書く人もいるが、正しい身体操作によってこれらの技術が可能になるのだ。
小林老師は馬賢達老師から日本で唯一の師範の資格を授かれたという本格派の人である!
馬氏八極拳セミナー IN 広島 レポート
約半年前の4月29日に続いて、中国武術最高峰・馬賢達老師の入室弟子でいらっしゃる小林正典老師に御願いし、広島にお越しいただき広島市内で馬氏八極拳セミナーを開催できることとなりました。
今回の受講者の中には、他門派の方や、警備員、そして警察官を目指している人、馬賢達通備武術学院日本支部に入会して間もない方も数名いて、今回の受講生は10名ぐらいでしたでしょうか。
当日は幸いに晴天に恵まれていました。
最初に架式を学びました。馬歩は上半身はリラックスして重心を落とすよう指導をうけました。その際、腰と足で馬に乗るような感じで落とし、その近くの筋肉は張りますが、股の部分は弛めるなど、簡単な立ち方でもいろいろと要求されました。完全に重心がおちると、足の裏まで全重心がおちていることを実感できるようなるとのこと。
普段でも10分程度は列車の待ち時間等を利用して馬歩の鍛錬を行うようにはしている人もいましたが、やはり上半身に力がはいっており、実際に「リラックスするように」と肩をたたかれ、具体的に自分の状態に気付かせて頂いた小林老師の助言は大変ありがたかったです。後で重心が十分に落ちているかどうか、老師は受講生を見られて確認されていました。
小林老師が「私の腕を引いて崩してみろ」と言われるので、私や他の受講生が何人も小林老師の腕を強く引っ張らせて頂きましたが、下半身が大地に根が生えているような感じで全くバランスを崩されません。逆に受講生の重心が落ちてるかどうか、手を引いたりして確認してみましたが、受講生はことごとく重心を失い倒れてしまいます。我々にとって目標とすべきところは、かなり遠方にあります。やはり、日頃の鍛錬が大事であることを受講生皆で肝に銘じました。
次に弓歩です。後足を捻り込むようなつもりで、あたかも後足が弓の弦のようなつもりで架式をつくっていきます。弓歩をきっちりとつくることで打法の威力も増すのは言うまでも有りません。そして虚歩へと進んでいく。
それからセミナーでは初めて基本的な蹴りの練習である腿法も行いました。練習が進むにつれて、汗が滲んできます。基本的な蹴りの練習後、戳脚の蹴りの練習をおこないました。点子腿、頂場、鴛鴦腿など通備武術独自の身法を用いた変則的な蹴りであるため、本日初めて触れられた方は多少戸惑われたかとは思いますが、皆さん「通備門ってこういった蹴り技があるのか」と感心されながら練習されました。さらに、鴛鴦腿に続いて後圏腿(後ろ回し蹴り)の連続蹴りや、大きく飛び込んで低いところを蹴るせっ腿を教えて頂きました。中には上半身の開合を使い、回転しながら上段を蹴るものもありました。
身体が完全に温まったところで基本功の練習に入りました。劈掌・掛掌・連環劈掛掌・臂横を教わりました。劈掌・掛掌については4月29日のレポートで掲載させていただきましたので今回は割愛させていただきますが、臂横については、かなり具体的な指導を受けましたのでご紹介します。実際に小林老師の丹田と背中に手を置いて動きを確認させていただきましたが、丹田が車輪のように動き、その力が背中の筋肉、そして肩へと連動し協調していました。まさに腹、腰、背中、胸が協調して動き、両腕は勝手に付いてきて開合するようなイメージで本当に滑らかな動きです。老師からも力を入れるのではなく、まず協調のイメージをしっかり体得するように指導を受けました。この臂横という基本功は通備武術の中でも「呑吐開合」という蓄勁と発勁の身体操作の要を体得する大変重要な練習であるとのこと。
武術において強調されるのは全身の力みを抜き切って柔らかく行うことです。これは一人で行う型であろうと相対で行う練習であろうと同じです。力を抜くことにより身体が鞭のようになり、全身の動きが協調され強いパワーを生みます。そのため馬家の八極拳は劈掛の基本功も行ないます。何故かと言うと、脱力によって出た打撃は力を込めて打ち込んだ打撃とは異なり、実際打たれると衝撃や浸透力ともに驚くほど大きなものとなるわけです。脱力とは言ってもダラダラとしたものではなく、全身の動きを滑らかに力を流れるように動かすためのものであり、わかりやすく説明すれば、相手に当てるインパクトの瞬間に、鞭であった身体が全身の協調により爆発され打倒するといったかんじです。
劈掛拳は「蛇身鷹翅」と呼ばれる拳法であって、身体をリラックス(脱力)するカリキュラムが整っており、従って馬家では劈掛拳のこれらの基本功でリラックスした柔らかい身体を作るわけです。劈掌・掛掌といった肩をグルグル廻しながら行う肩を柔らかくする練功法と臂横といった身法練習を行うことにより、より連続回転や曲線の動きが自在になれるのは言うまでもありません。
劈掛拳は「轆轤反車」の勁を追求し、またその勁を「轆轤反址勁」と言います。早期の劈掛拳家は「轆轤反車」の原理を使った表現を形容し、猛烈に連続回転する滾動勁を行う。功成った人の「ゴー!」とすさましい音を出しながら打ち出します。
ついで弓歩でおこなう基本突きを学びました。馬歩から弓歩に架式をかえながら、足裏からの勁を膝、腰、背中、そして拳に伝えていきます。小林老師には最初はゆっくりと動いていただきましたが、最後の方は目にも止まらぬというか、本当に飛び出していく拳の勢いには凄まじいものがあります。初心者の方へも老師自ら手取り足取り指導され、かなり感覚がかわってきたのではないでしょうか。
黙々と八極拳の基本突き冲捶(ちゅうすい)をおこなう皆さん
ダン!!と強い震脚を行いながら打つのだ。皆さんの目がマジになっていますよ!
また八極拳の基本打法である冲捶と川掌を教わりました。虚歩で後ろ足に貯めた力を前足の捻りと連動させ跨を切りながら拳(掌)に勢いを乗せるため三盤合一が要求されます。今回、特に時間を割いていただきました。特に、川掌では勁の流れを本当に意識出来ているか二人で確認しあう方法も教わりました。合わせて寸勁を何人かの受講生に軽くですが、うっていただき、その威力を経験させていただくと同時に理論的な説明も受けました。今回のセミナーでは特に基本について時間を割いていただき、まったく初めて受ける人でも分かりやすいように丁寧に指導頂けたと感謝しております。
後半では八極拳の基本拳路「八極小架」と「八極拳」を教わりました。文章だけでは詳細にお伝えできないかもしれませんが、今回も具体的な用法も詳しく教わりました。特に肝に銘じなければならないのは用法は決してワンパターンではなく、状況によって、技は自在に変化させなければならないということです。もともと八極拳は極端に言えば相手と身体と身体がくっつくような近い間合いで戦う武術でもあるわけですが、相手との距離や相手の攻撃によって、こちらの打撃が体当たりに変化したり、肘打ちになったり、投げ技になったりと変幻自在というか融通無碍というか、ここにマニュアル化出来ない武術の奥深さがあると思います。
今回のセミナーでも八極小架の用法に対して、またもや新たな発見がありました。単純な打撃と思っていたところが距離をコントロールすることで投げ技にもなったり、当方の技を防がれると同時に次の技をかけるという、そうした発見の一つ一つによって武術に対する自分の関心が強くなっていることを自覚している今日この頃です。
中国武術は技を実用するためには、「招法」即ち秘伝の用法を知らないといけないと思われがちであり、現にそのような主張をしている門派は多くあります。これは宗家だけしか伝わってない秘伝だとか云々・・・知ったかぶりする人が多いです(笑)
しかし用法そのものに秘伝があるというよりは、用法を実戦に活かすために要点こそが秘伝があるのだと言っていい筈です。
簡単に説明しますが、相手が打ってきた場合、蹴ってきた場合は、その拳面や腿の一部だけを意識しがちになりますが、しかし拳の背後には腕や肩→身体と一本の線(足の場合は腿→胯→身体)でつながっているわけです。すなわち拳が打ってきたということは、こちらが攻撃する目標の相手の身体も同時に近づいて来ていることになります。
逆に言えばその一本のライン線を意識すれば、当方が攻撃する場合は、距離によって突きとなり、肘になり、肩、頭突きになるのは可能となります。
よって一旦出した手はジャブのような引くような単調なことはせずに、相手との接点部分を中心にして連続的に攻防を繰り出すのが大切であり、そのためには身体をリラックスすることにより、攻撃してきた相手の方向を接触し感じ取れ、その流れに乗って攻撃したり防御したりします。
通備の八極拳は他の八極拳と違って劈掛の動きが取り入れられていることにより、轆轤反址勁が加わっています。「轆轤反址勁」は連続して回転して行う発勁であり、回転した動きが攻防をより円滑となり、相手が打ってきた方向を反らせると同時にこちらの腰腿は捻りが加わり、相手の突きを反らせると同時に十分な蓄勁が行えます。それを解き放つように一気に攻撃をする。もしそれを相手が裂けたら、相手の状況によって、作用反作用を利用してさらに別の攻撃に変化する。円の連続回転の動きによりさらに威力が増大していくわけです。
用法説明でも小林老師は「手をやわらかく使う」と繰り返し仰っていました。
なお、実技だけ学んでも身体に身に付かなければ意味がなく、教わったことをきっちりと身につけるためには、自分で納得できるまでやってみることが大事です。本日のセミナーの中でも受講生は大纒、小纒の掛け合いに対して、自分なりの理解を踏まえながら何とかものにしようと掛け手と受け手が協力しあっていました。武術的な感覚を身につけるために、普段の練習で、散手などの相対練習を通じて経験を積み、自在に動ける身体にしなければならないことは当然なのですが、やはり、先述した架式や基本功の鍛錬をしっかり積んで通備武術を受け入れられる柔軟でしなやかな身体を作るとともに、頭、感性をも磨いていかなければと肝に銘じた次第です。
御多忙のところ、わざわざ時間を割いて、こちらのような地方に御指導に来て頂いた小林老師に感謝しますとともに、本日セミナーに参加した受講生の方々とともに、今後も広島でも頑張っていかなければと決意しまして筆をおかせていただきます。
小林老師本当にありがとうございました。
小林老師インタビュー
K(小林老師)、T(私)
T:老師、お疲れ様です。今回のセミナーを行う前から「まだか、まだか」と言う声が上がっていました。
K:嬉しかったが驚きました。毎回こちらへ来てみなさんと接して思うのですが、まさかここまでの地方に、これほど私に習いたい人がいようとはね。オーバーでなく本当に武術をやっていて良かったと思っています。これはあなたたちみなさんのお陰だ。
本当にみなさん熱心ですね。受講後もみなさんに捕まってしまいそうでなかなか場所から離れることができませんでした(笑) それにしても地方の人は上達が早いですね。普段私は東京で教えていますが、地方こそ私が本当の理想としている武術を伝えることができるかと思う。東京の人と違って自分から進んで私に向って練習してくれている。そんなみなさんならきっと出来る!いずれはきっと高いレベルまで達せられると信じています。これを聞いて少しは東京の練習生も発奮してくれたらいい。遠慮して待つだけでは技は盗めないもの(笑)
T:有り難いお言葉(笑) 一つ聞いていいですか?老師は武術を長く練習されています。老師自身の目標は?これぐらいはしておきたいこととかありますか?
K:特にはありません。例えばゴールを設けてそれが届かなかった場合、上手く行かなかった評価を自分でしてしまうことになる。それよりも来年、再来年、何年後と健康で動ける身体を保ち、今までの経験をさらに上積みできたらいいと思う。その経験がみなさんに役に立ってもらえたら嬉しいです。
20代の私は武術は倒すもの、倒せなければゼロ。倒せない自分になるなら消えてなくなってしまったらいい。そんなことを思っていたわけです。武術を初めて間もない頃、一時的に他流派の人とも交流したことはあったけど、武術の世界はとても小さく感じた。家族的な人たちもいたが、本当にこの業界をいいものをしていきたいのか?あなたたちはどうしたいのか?そういう疑問もあった。そう考えてからこの業界から離れた時期もあった。本来1993年には馬賢達師父とは日本支部開設への話は進んでいたんだけどね。離れている間は馬賢達師父とは個人的には付き合っていたわけですが。そして何年か経ち、大好きな武術が本当に素晴らしいものだと証明するためにも少し考えを改めることもあり、日本支部を始めた。離れていた5年間は棒を振った形になったが、いろんな勉強をさせてもらいました。
今こうして活動をしていて私の周りには素晴らしい人たちが集まってくれて嬉しく思う。
T:通備武術は動作が大きく、初めて間もない人は上体がグラグラして安定しにくい傾向があります。老師の場合はどうでした?
K:私も最初の頃は初心者の人と同じでしたよ。重心の取り方と動作がうまくアジャストできなかったという問題を抱えていました。それを解決するために師匠に聞いてみたり、考え方も変わってきたこともあったけど、常に向上したいという気持ちが強かったから、アドバイスを素直に受け入れることを心がけましたね。
姿勢及びバランスのとり方は重要です。最初はバランスの悪さが問題だと思っていたので、師だけでなくいろんな武術関係の先輩からのアドバイスを聞きながら、何年も試行錯誤を続けました。
大切なのはアドバイスをどう吸収して実行に移せるかだと思います。私なりにかなり工夫もしたし、ハードな練習もしてきたと自負もあります。それは今も続いています。フラストレーションが溜まることがあっても自分を崩さないようにしています。
初めて間もない人は姿勢と動作を正確に行うことが大切でしょう。正確に拳を練っていくうちに安定した架式ができ、全身の動きが協調していくようになります。
T:このサイトを見ている人でまだ中国武術についてよくわからない人がいると思うので、聞きますが、中国武術の発勁とは?
K:中国武術は勁で打ち出すのはすでにみなさんでもご存知のはずです。よって己の筋肉を力の「原動力」ではなく、力の「伝達器官」として身体を働かせるのであり、真に身体に力を抜き切ることができることによって(長年武術を修行してきている人でも真に力を抜き切ることができないのがほとんどのようだ)、はじめて筋肉骨格系とは別の原理による運動(内勁)も可能ということです。
中国武術の発勁は明勁、寸勁、暗勁、冷勁などにがあるが大きく2つに分けると「長勁」と「短勁」に分類される。
長勁(明勁)においてはどのように打ち出して放ったかが明確にわかりやすい。体の筋肉の動きや体の重心の移動などを協調させることによって打ち出していることによって強い力を発揮できる。
短勁(寸勁・暗勁・冷勁)においてだが、長勁のように大きく動いたり、移動して打ち出したりしない代わりに、経絡の流れや丹田といった幹の部分・内臓などを含めた全身を協調させることにより強い勁が打ち出すことができる。よってどのように放ったかわかりずらいのが特徴です。
これらの勁の表現のおおざっぱな区別ぐらいは、中国武術を志している人または興味がある人ならわかっておられるかと思うのですが。実際に本当に体現できるかは別として・・・。
しかし丹田ができ気を充満できるようになると「長」、「短」と関係なく丹田からのエネルギーがうねりを上げて爆発しながら回転して出ているのが感じられます。ただ動作が大きいのか小さいのかの違いだけです。
T:その丹田とは?
K:正しいカリキュラムで鍛錬することによって、丹田の気を培養し充満させ、その後に肢体の動作を運用して筋肉または丹田に対する圧縮をおこない、その反作用を利用して足裏から爆発力を生み出す。そのエネルギーを脊髄の組織に浸透する伸縮作用(通備門では「呑吐開合」)で外に向かって発する体全体の震弾発放力ということです。そのエネルギー源は丹田であり、丹田から動くのを利用したのを技にのせて勁を発する。内面の功夫を練るには丹田を練ることが必要ですが、長くなるので説明を省略します。日本でも多くの教室や道場で太極拳や気功を指導されている。しかしほとんどが、丹田についてあいまいな指導をされているのが現状のようだ。丹田そのものをわかってなく、丹田とはただたんに「気沈丹田」するための意識するポイントであればそれでいいと解釈されて指導されている指導者の方々も多いのではないだろうか?そのことによって観念や理屈ばかりが先行して実際の技術を体現できる方が非常に少ないようですね・・・。しかし、内面の力を最大に出すには丹田こそ中心的な幹であり、経絡が身体部分の個々をつなぐかけ橋だと思う。だから筋肉を固めるのではなく、全身力を抜いて身体の力は途切れてはいけない。足先から手先まで力がすみずみと流れて至ることが大切です。ちなみに私が拳を打ち出す時、丹田から出ているのがハッキリとわかるわけです。丹田ができると丹田に球体のようなかんじがわかる。うまく表現できませんが、打つ時ボールが足腰の捻りによって回転して飛び出しているようなかんじです。体の各筋肉はスプリングのバネと思ったらいいかと思う。
人間は直立した脊髄動物であり、足裏(湧泉穴)から頭頂までの間に、足、腿、胯間接、脊髄、首、肩、肘、手首などの部位の構造があり、それらを統合するのが強い勁を出す重要な鍵です。
それを八極拳では「三盤合一」という表現をされている。
末端部分の足、特に足裏から特殊な方法による操作によって発せられた力を丹田からのエネルギー(呼吸も含める)と共に両膝の伸力を利用して尾骨→仙骨→脊髄へと伝え、それから開合と呑吐の動きと協調させ肩→肘→手首を通って前に送り出される。それに意念の主導と貫通(通備拳では意力貫一という)を加え、さらに勁を増大するわけです。
足の裏から拳までの間で、勁が各筋肉や各関節で止まるのは、一般に武術を修行されている人にはたびたびあることであり、私自身も以前そういうことがたびたびあった。それがうまく勁全体を出しきれない原因であります。勁をうまく操作できない一つの原因として各部位の運動原理、操作を理解してないことがある。それを克服するにはやはり体現できる指導者について練習していくのが一番の近道ですが・・・・。
正しく指導をうけ原理を理解すれば、いずれは動きが霊活になり体全体の動きに効果が形成できる。
もし、「捻腰切胯」(腰胯の操作方法の一つ)がスムーズにできないと上半身と下半身の動きがバラバラとなり、また肩の力を抜けずに落とさないでいると勁力の発揮を大きく消耗してしまう結果となってしまう。
筋肉を緊張し固くさせるということは、マイナスの要因にしかならない、究極に極めるには筋肉の運動のみではなく、筋膜、腱、骨格をうまく連動させれるように鍛錬をおこなうのが必要です。上半身、特に鳩尾付近を固いと、そうしないと運動だけでなく呼吸でもスムーズにはいかない。
姿勢が正しくなければ、筋肉や骨格が硬直し弾性も失ってしまい発勁の効果も弱くなってしまう。一つ一つの正しい鍛錬が必要である。武術というものは先人たちが研究開発した成果であり、その正しいカリキュラムは鍛錬するのに最も有効な方法です。各流派によって各流派なりの修練方法があるが、通備門では、馬鳳図、馬英図、馬賢達といった全中国武林に勇名を馳せた達人から受け継がれた最も有効な方式がある。ただ残念なのは、短期間でしか学んでなくてよく理解していない人がまだ多い。これは私たちが解決しないといけない問題です。
T:呼吸による操作とは?
K:呼吸についてですが、基本的には「横隔膜の上下運動によって呼吸が営まれる」といったかんじであるが、丹田ができると自然に気が丹田に導かれる。呼吸運動によって最大のエネルギーを得るには横隔膜による上からの力に対し、腹腔の骨盤隔膜が働くことによってはじめて可能になります。骨盤隔膜は骨盤腔を横切る隔膜で体壁の最下部にあり腹腔内容を保持しているかたちとなっている。そして骨盤隔膜の下に位置する会陰膜の働きが深く関連する。横隔膜、骨盤隔膜、会陰膜の3つがいかにうまく操作できるかが、丹田呼吸のみならず、武術における重要な鍵の一つだといえるでしょう。
通備門では「収腹欽臀」(簡単に言えば、腰を屈し腹を収めて、提肛する意味である)と「含胸圓背」の動作により蓄勁をおこない発勁の準備をする。ようするに、尾骨から頚椎部分までを弓を発するかのように発勁をおこなうためのその準備である。ついでに言わせてもらうが、「収腹欽臀」と丹田に気を充満させるのに大きく関係があることを知ってもらいたい。『収腹欽臀』によって腰(特に尾骨)を丸めることにより提肛ができ、丹田を引き上げるような形にすることによって、気が漏れていくのを防ぎ丹田に気を固定することができるのである。ここまで説明すると今回私が何を言おうとしている意味がだいたいはわかってきてくれたかと思う。まだわからない人はウチへ習いに来てください(笑)
丹田で呼吸できるようになると腰の裏側あたりの筋肉が働き始めるのがハッキリ自覚できる。これは脊髄とも関係があり、その活性化によって「呑吐開合」や「三盤合一」で打ち出す勁がより強大となった。あくまで私が修練によってかんじとったことだが、証明はできる!
中国武術には「外功」や「内功」といって筋肉の機能を中心とした修練(外功)に対し、内面の修練としての内功がある。それらを併用して修行することが大切だと思う。
ついでに気について説明させていただくが、気を集めてとか云々ではなく、「気」は生体エネルギーとか宇宙パワーなどといったオカルトなものとして判断するのではなく、「空気の圧力」と理解するべきです。冷静に考えればわかることであるが、いわゆる「気」で掌に感じる微妙な熱感でいかに頑張ったって、真剣勝負の場において、それが何ら役に立つはずがありません。
武術の最終目的は迅速で剛猛な功勁を瞬間的な爆発力で相手に伝えることであり。それができれば、その作用により人体に大きなダメージをあたえるのです。武術はけっして気だとか呼吸だとか言って人を飛ばすような曲芸ではありません。
T:せっかく詳しく説明して頂きましたが、初めて中国武術を知った人には難しく感じるかもしれません。基本から正しくやればこれらのことが体得できるわけですね?
K:そのとおりです。優れた武術家を育成するにはそれなりの正しいカリキュラムが必要なわけです。最初は単純でわかりやすいものから、少しずつ高度なものに進んでいく。とにかく練習しなければ何も始りません。第一拳を練って身体を作らないといくら優れた技を習ったって使えませんからね(笑)
T:最高の武術とは?
K:それはあまりにも多い質問ですね(笑) いろんなタイプの武術があり、優れたものがあったから今の世まで受け継がれてきたのだから、「最高」を選ぶのは、難しいのではないでしょうか。私は今までやってきた武術が好きなので興味ない質問ですね。
写真をご覧いただきたい。練習後、受講生の中で力自慢の2人に満身の力で押してもらったのを一本の腕で支えている所である。
六大開の「頂」の力を用いたものであり、押してくれた2人は疲れ果ててしまったが、ビクともしないのだ。
一点でも姿勢や力の流れを間違えると上半身と下半身の伝達経路が遮断してしまい、力自慢の2人に崩されてしまうのは言うまでもない!
これは初歩程度のレベルのものだが、正しい姿勢により全身体の内外の動きが統合されているから、押して出してくる力は地面に流さていき、押された方は緊張は感じないのだ。これを応用して重力の反作用を利用して力を発すれば相手を強く打倒することが可能となる。
劈掛拳は特に身体及び腕を柔らかくして、身法を伴って轆轤反址勁で打ち出す拳法である。
ご覧のとおり轆轤反址勁により連続回転し相手の攻撃した手を巻き込みながら打倒しているのがわかる!まさに曲の拳法である!!
相手が突いて来たのを円の軌道で相手を崩しながら接近して相手を振り飛ばすわけだが(写真(1)〜(2))、相手の強い攻撃力を軽く触れながら、身体をリラックスして受け、そして皮膚感覚を通して円の軌道でコントロールさせながら無力化して、重力の作用反作用をともなって相手を打倒するわけである。
参加者の感想文
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今まで雑誌等で見ていたりして中国武術は知っていました。だけど武術は本物を見ないことには本当の良さはわからないということで今回のセミナーに参加して実感しました。先生から習って大正解でした。
先生の技は一瞬のうちに爆発し、同じ受講生の人たちと一緒に思わず感嘆の息が漏れてしまいました。実際に先生から用法の説明を受けながら技をかけてもらえましたが、手加減してくれたのにあれっ?何でなんだろう?と驚きでした。もし今までのように習っていなかったら後々きっと後悔していたと思います。ありがとうございました。
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今回初めて馬氏八極拳セミナーに参加させて頂きました。小林老師、ありがとうございました。実は今までいろんな中国武術の講習会に参加していたのですが、正直物足りないものばかりでした。中には本にも登場している有名な老師が教えてくれる講習会にも何度か参加しましたが、満足はしませんでした。中には参加している人たちで和気藹々として仲が良いのはわかるんですが、雰囲気がなあなあな所もありました。太極拳の集体練習のようなことをやっている感じだったのが印象的です。勿論これだけで今まで指導してくださった各老師や流派を判断するつもりはありませんが、正直中国武術なんてこんなものなのかと思ったことが何度かあったのは事実です。
ですが、今回小林老師から指導を受けて、とても充実した学習をさせてもらいました。理論から発勁、用法まで詳しく教えてくださいました。老師の指導の中には厳しくても熱いものを感じたぐらいです。同時に「俺って今まで一体何をやってきたんだろう・・・」って思ってしまいました。セミナーの翌週に同じ武術仲間の友人に会い、その時小林老師から習った八極拳の用法をその友人にかけたら見事決まりました。正直嬉しかったです。
また小林老師から指導を受けたいです。次はいろんな質問ができるぐらいになれたらいいなと思いながら、次回のセミナーを楽しみにしています。
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今回初めてセミナーに参加し小林老師に指導していただきました。今まで老師の動きはビデオでしか見た事がありませんでしたが、実際に見せていただくと一つ一つ動作に柔らかさと力強さが感じられ、架式1つを取っても沢山の指導を受け自分の未熟さを痛感しました。
小架の用法についても今まで知らなかったのですが詳しく説明していただき非常に勉強になりました。今回のセミナーで学んだ事を意識し練習して少しずつでも上達していきたいと思います。
次回も参加できる機会があるなら是非参加し小林老師から沢山の事を学びたいと思います。
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私は普段は山口県の防府市で福田先生に指導していただいており、小林老師からのセミナーでご指導いただくのは今回で2度目になります。
初回でも一通り用法等説明していただいてはいたのですが、今回でも新たな用法を発見することがたくさんあり、とても勉強になりました。
小林老師に色々と技をかけていただいて吹っ飛ばされてばかりの私でしたが、相手との距離や攻撃の仕方により様々な形に変化する老師の技は連続性があって威力があり、ただただ驚くばかりでした。しかしこれはごく普通の技法であり、さらに上のレベルになると、技術のコンビネーション以前に実際相手が動き始める以前に意念の流れに対して操作して働きかけることにより、攻撃しようとしている相手の動きを崩して無力化できるとのこと。
ですが、私の場合は套路や技の練習をするより前に架式や基本功といったもっと基礎的な部分を鍛錬していくようご指導いただきました。
通備拳の套路や技を身に着けるのもすべて架式や基本功ができてこそのことで、私には本当に出来ていたのか・・・?本当は出来ていませんでした。
正直ショックでしたが、目の前に課題ができたことと大きな目標ができたので、その部分を意識的に練習していきたいと思います。
小林老師の熱のこもった体当たりのご指導を活かし、自分自身通備拳で強くなっていくためにも今後福田先生にまた基本からご指導いただきたいと思います。
また、機会があれば上京して東京や神奈川の方々と一緒に小林老師にご指導いただきたいと思っておりますので、そのときはよろしくお願いします。
せっかく本場の名門馬氏武術を本格的に習える環境にありますので、将来的には、この伝統を継承していきたいと思います。
上京しても普段から毎週小林老師に学べる環境がある東京や神奈川の人たちには負けません。
最後に境田さんすっかり回族になっていますね!
この度はご指導いただいて本当にありがとうございました。
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セミナーへの参加は今回で2度目になります。今回も強調されたのが放鬆(ファンソン)、及び放長撃遠です。これは中国で馬賢達老師からも何度も言われました。
わたしは上体に余計な力が入りやすく、未だ常に意識していなければ出来ません。
通備では八極の小架においても放鬆と身法の協調が要求されますので、力強くドシンと踏み込む下半身の部分と、やわらかく、かつしなやかに用いる上体との強調が非常に難しく、套路をなぞっている最中でも体が強張る瞬間が意識できます。
さらに、套路は様々な場面を想定した型稽古でありますので、用法を意識せずにただ型をなぞるのでは、踊りになってしまいます。この点は小林老師に何度も指摘していただきましたので、頭では理解しているのですが体のほうは理解してくれていないようで、腰が動けかないと手が動かず、腰が動けば手が出る、といった風で、腰腹といった身体の幹の部分を支点とした未だ全身の強調は図れておりません。
今回のセミナーでは用法及び変化まで丁寧に教えていただきましたので、あとは実戦での場面をイメージした稽古を行うのみです。想像の中の敵すら打ち倒せずに、実体を持った相手を打つことは出来ませんので、招法を踏まえた上での稽古は重要であると考えます。現状に満足せず高みを目指し邁進する、幸運にもその機会??得ることが出来たことを感謝いたします。ありがとうございました。
それにまた機会がありましたら西安へ行って馬賢達老師から習いたいです。
追伸:今回ご一緒した皆さん、またお会いしましょう。それでは。
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「武芸は一日にして成らず」、その言葉を改めて痛感した一日となりました。架式といった基本の立ち方からして満足に出来ておらず、馬歩で重心を確りと落とした積もりでも、小林老師に腕を軽く引かれると直に倒れてしまいました。自分では何度もわかっている積もりでもです。
逆に普通に立っているだけの小林老師の手を引かせて貰ったのですが、「もっと強く引けないのか」と言われるほどで、重心が確りと落ちているのだと分かりました。
基本功では、小林老師が呑吐開合の説明をされた際の「陰と陽が協調する」というまったく中国武術がまったくわからない人でも受け入れれるような言葉でわかりやすくユーモアで指導してくれるのが印象的で、丹田と腰が上に動けば背中が丸み胸が閉じる、逆に下に動けば背中部分が閉じ胸が開き、動きが上手く伝わっているのが実感しました。やはり武術を学ぶのには実際出来る人の身体を触ったりしながら感覚を掴むのが大切なんだなと実感しました。秘伝に触れた気分です(笑)
八極小架、八極拳の套路の際は、今までは唯手を広げるだけの動作だと思っていたものも、体当たりや投げになり、動作一つ一つに幾つか用法があり意味が有るのだと教わり、深く感銘しました。
セミナーに参加したことで、中国武術の難しさ、奥深さ、そしてそれ以上の嬉しさ、楽しさを呼び起すものとなり、大変感謝してします。これをきっかけとして、もっともっと練習して、東京本部の人たちにも負けないような実力をつけていきたいと思います。正直、毎週、小林老師の御指導を受けることができる環境にある東京本部の練習生の方はうらやましい限りですが、東京の方々に負けないように、地方でも一生懸命精進していきたいと思います。将来は東京本部の方々と対抗戦をやれるように切磋琢磨していきたいです。都会の人なんかには絶対負けません!
地方パワーを必ず見せ付けてあげます。
今回大変貴重なセミナーを設けていただきありがとうございました。
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当日夜勤が終わってから会場に駆け付け、一時間遅れての参加です。かねてからセミナーに参加したかったのですが、今まで勤務の都合で参加出来ませんでした。やっと念願が叶ったという感じです。
さてセミナーの内容ですが、まず架式や基本打の確認をされました。站套や放鬆(ファンソン)、発勁の仕方、勁道の確認など、なかなか小林老師の指示通りに動作できず、日頃の練習不足を実感しました。次に小架と八極拳の套路に進みました。老師の用法の解説に、私の日頃の間違った理解を正すと共に、武術の奥深さを感じました。小林老師の八極拳の動きはただ直線的ではなく、滾勁などが入っていて身法と協調した中での強い打撃を産んでいます。
ただ、一度に多くの事を教わった為、ついて行くのがやっとでした。あと、老師にうまく質問が出来なかった事も反省点です。これからも努力精進しなければと感じました。
最後に遠路からお越しになり、貴重な機会を与えて下さった老師に感謝いたします。ありがとうございました。